2014/3月掲載

「大理石の男」「Uボート」「リンダ リンダ リンダ」


 

 

  

 

 

1980年日本公開 ポーランド映画 上映時間 241

 

 

監督:アンジェイ・ワイダ  

 

出演:イエジー・ラジヴィオヴィッチ

   クリスチナ・ヤンダ 

 

 

アンジェイ・ワイダ渾身の一作です。

 

1976年、ポーランド。映画学校の生徒アグニェシカは卒業映画の題材を1950年代の「労働英雄」にすると決めて

 

いました。その時代はスターリン全盛でした。アグニェシカは資料を探すために博物館を訪れます。

 

そこで倉庫に無造作に転がされているかっての労働英雄ビルクートの大理石像を発見します。

 

興味を抱いたアグニェシカはビルクートの背中を追い始めます。関係者から話を聞いたり古いニュース映像を

 

観て判ったことは彼は有名な「煉瓦積み工」だったということでした。戦後ポーランドでは住宅が不足しており

 

その建設が急務でした。建物の土台となる煉瓦をいかに早く正確に積み上げるかというキャンペーンを国を挙げ

 

て行っていたのです。ビルクートはグループの責任者としてそのキャンペーンに参加、煉瓦積みの新記録を打ち

 

立てます。一躍労働英雄となったビルクートは国内各地を回って煉瓦積みのデモンストレーションをすることに

 

なります。しかしある町での作業中、熱く焼けた煉瓦を渡され大やけどをします。作業仲間が疑われますが

 

ビルクートは庇います。眼の前で行方不明になった仲間を救出するために彼はワルシャワまで出かけて行きます

 

適当に聞き流す担当者にビルクートはしつこく食い下がります。そのためにビルクートは疎まれ、更にあらぬ疑

 

いをかけられて刑務所に送られ職も名誉も失ってしまうのでした。アグニェシカの粘り強い行動力が時の権力の

 

思惑によって翻弄された一人の労働者の生きざまをあぶり出していきます。そして物語は1981年製作の「鉄の

 

男」に引き継がれるのです。 

 

この映画はポーランド国内では2年間上映禁止処分を受けましたが、1978年の第31回カンヌ国際映画祭に

 

ポーランド当局に無断で出品、スニークプレビューされ、国際映画批評家連盟賞を受賞しました。

 
(C) 1996 Barvaria Film GmbH
(C) 1996 Barvaria Film GmbH

 

 

Uボート

 

 

1982年日本公開 ドイツ映画 <予告篇>

 

上映時間 初回劇場公開時215 

      ディレクターカット版329

 

 

監督:ウォルフガング・ペーターゼン

 

出演:ユルゲン・プロホノフ / ヘルベルト・グレーネマイヤー / クラウス・ヴェンネマン

 

 

監督のウォルフガング・ペーターゼンを一躍世界のひのき舞台に押し上げた作品です。舞台はドイツが敗戦の色

 

を濃くしていく1941年秋、ドイツ占領下の北フランス。ラ・シェル基地を出港し大西洋で戦闘任務につくドイツ

 

の潜水艦U96号の乗員は30歳の艦長以外は殆んど戦闘経験のない若者たちで占められていました。狭い艦内、

 

頭上を行く駆逐艦、爆発する機雷。極度の緊張と恐怖を強いられ疲弊していく乗組員たちの様子がリアルな

 

タッチで描かれていきます。時間の経過とともに髭がのび、シャツが薄汚れ、汗臭さまでが画面から匂ってくる

 

ようです。何よりも感心するのは確かなカメラワークです。極限にまで狭められた館内を乗組員の背中を追って

 

縦横無尽に動き回ります。33年前の作品ですからCGなどはありません。すべて実写です。役者と裏方の動きを

 

計算しつくしてのことでしょうがその演出力に感心します。クライマックスはイギリス軍が守りを固める地中海

 

の入口、ジブラルタル海峡を突破する場面です。幅11キロしかない海峡を果たしてくぐり抜けられるの

 

か・・・。頭上をいく駆逐艦のソナー音が息を殺す乗組員たちの耳に響きます。ラストは実に皮肉なものです。

 

この映画は「海の勇者」「灰色の狼」などと持ち上げられ、その実、出撃した隊員の内4分の3が犠牲になった

 

Uボート乗組員の実態をリアルに描いた作品です。

 


(C)2005「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ
(C)2005「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ

 

 

リンダ リンダ リンダ

 

 

2005年公開 日本映画 上映時間  154 <予告篇>

 

 

監督:山下敦弘

出演:ペ・ドゥナ 前田亜季 香椎由宇 関根史織

 

舞台はある高校の文化祭。その実行委員らしい女の子がやはり同じ委員らしい男の子の構えるビデオカメラに向かっていかにも高校生らしい青臭いセリフで文化祭の意義を述べているところから始まります。その文化祭に出場する4人の女の子のバンドの物語ですが、そのうちの一人が指を怪我して文化祭に出場できなくなってしまいます。それをきっかけに出場「する」「しない」にまでなってしまうのですが、結局「する」ことになっても、なお何を演奏するかも決まらない有様です。更に欠員となったボーカルを探すのに「最初に目についた女生徒にする」といういい加減さです。その最初に目についたのが韓国からの留学生ソンでした。何のことか良く分からず「はい」と返事をしてしまったソンは「ボーカル」だと知り、しり込みしますが半ば強引に引きずり込んでしまうのです。ブルーハーツの「リンダリンダ」「僕の右手」「終わらない歌」を演奏することを決めますが、文化祭まで日にちがありません。徹夜の連続で練習します。その練習風景も必死なんだかいい加減なんだかよくわからない「いまどき」な空気が漂います。しかし何といってもソン役を演じたペ・ドゥナがハマりました。彼女がいなければこの映画は実に平凡なものになったことでしょう。歌詞を覚え、次第に上手くなっていく様子が良くわかります。また言葉がうまく伝わらないことを逆手にとったせりふ回しや“間”の取り方はさすがで、ソンが練習のために一人で行ったカラオケ店での店員とのやりとりなど思わず笑ってしまいます。ペ・ドゥナのおかげで映画にメリハリがつきアクセントが生まれました。いまどきの女子高校生、決して熱くはならず、かといっていい加減でもない。ぬるま湯のような、ある微妙な空気感は山下敦弘監督独特のものです。

 

会場となった前橋工業高校は撮影時、移転のためにすでに備品が運び出されておりセットとして自由に使えたので校内や文化祭の雰囲気がよくでています。「リンダリンダ」を作詞・作曲したブルーハーツの甲本ヒロトの弟、甲本雅裕が小山先生役で出演しています。