2014/4月

「怪談」

 

 

 

 

1965年公開 日本映画 上映時間303

                  <予告編>

 

監督:小林正樹

 

 出演 あらすじ

黒髪:三国連太郎 新珠三千代 渡辺美佐子

 貧しかった武士は立身出世を望み、美しい妻を捨て良家に婿入りして遠い任地に赴く。新しい妻は我がままで浪費癖が激しい女だった。それにつけても思い出すのは元の妻のことばかり。長い任期を終え昔の家を訪ねるとそこには以前と同じように機織りをしている長い黒髪の美しい前妻の姿があった。武士は泣いて詫びるが・・・。 

 

雪女:岸恵子 仲代達矢 望月優子

 

 巳之吉は茂作と一緒に薪を取りに森へ行くが、猛吹雪に遭い山小屋に避難する。夜中に目覚めた巳之吉は一人の美しい女が茂作に息を吹きかけているのを目撃する。女は「見たことは誰にも言うな。言えばお前を殺す」と言い残し去っていく。茂作は凍死していた。十年の歳月がながれ、三人の子宝に恵まれた巳之吉は思わず妻に昔話を語り始める。 

 

耳無芳一の話:中村賀津雄 丹波哲郎 志村喬

 

 寺で暮らす盲目の琵琶法師 芳一はある日、武士の訪問を受け「高貴なお方の前で琵琶を聞かせてくれ」と言われて出かけ「平家物語」の壇ノ浦の合戦を奏でる。それから武士は毎夜やってきて芳一を連れていくようになる。次第に痩せていく芳一を心配した住職が寺男に後をつけさせると平家の落武者の墓前で琵琶を弾く芳一の姿があった。怨霊の呪縛から解き放つため住職は芳一の体中に般若心経を書きつけるが・・・。 

 

茶碗の中:中村翫右衛門 滝沢修 杉村春子

 

 中川佐渡守の家臣 関内は殿様のお伴で年始回りをしている途中、水を飲もうとする。茶碗に水を汲み顔を近づけると見も知らぬ若侍の顔が映っている。茶碗や水を変えても同じように若侍が現れるが関内はその水を飲み干す。夜勤をしていると昼間水に映った若侍が現れる。刀を振りまわし追い払った関内の家に今度は若侍の家来だと名乗る3人の武士が現れるが関内はこの3人も追い払う。この物語はある作家が結末の無い物語として書いたものだが版元がその作家を訪ね水瓶を覗くと・・・。 

 

今から半世紀前「人間の条件」(1959年~1961年)・切腹(1962年)の小林正樹監督が作った作品です。小林監督はこの作品の後も、「上意討ち・拝領妻始末」(1967年)「東京裁判」(1983年)など重厚な作品を世に送り出しています。 

 

この映画はよくご存じの小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の原作「怪談」の中から「黒髪」「雪女」「耳無芳一の話」「茶碗の中」の4編を映像化しています。 今ならホラー映画のジャンルに分類されるのかもしれませんがその芸術性は高く評価され、カンヌ映画祭審査員特別賞を受賞、アカデミー外国語映画賞にもノミネートされました。作品を見ると監督をはじめ撮影(宮島義勇)・美術(戸田重昌)・音楽(武満徹)らの力の入れようがよくわかります。俳優陣もそうそうたるメンバーです。巨大な格納庫にセットを組んで撮影したとのことですが大道具・小道具・メーキャップなど裏方の細やかで丹念な仕事ぶりには目を見張るものがあります。どこか歌舞伎を思わせる様式美、幻想的なセット、テレビに押され始めた映画界が英知を結集して作り上げた作品ですが外国で評価されたほどには国内で動員が出来ず、製作会社のにんじんくらぶは倒産の憂き目に遭ってしまいました。コンピュータも無い時代に創意工夫し、これだけの作品を作り上げたすべての関係者に脱帽します。