2013/11月掲載
「かぐや姫の物語」「夢と狂気の王国」「
かぐや姫の物語
2013年11月公開 日本映画 上映時間2h17 <予告篇>
STAFF
原案・監督・・・高畑勲
脚本・・・・・・高畑勲 / 坂口理子
音楽・・・・・・久石譲
企画・・・・・・鈴木敏夫
プロデューサー・西村義明
CAST(声の出演)
かぐや姫・・・朝倉あき
捨丸・・・・・高良健吾
翁・・・・・・地井武男
媼・・・・・・宮本信子
相模・・・・・高畑淳子
高畑監督に乾杯。こんなに深く感動の底に沈みこみ余韻に浸った映画は久しぶりでした。
物語は誰でも知っている昔話です。高畑監督はそのストーリーを追いながら要所要所で立ち止まり、掘り下げ、
私たちの注意を喚起します。要は「幸せ」について語っているのです。貧しいから不幸なのか、金があれば
幸せなのかという人が生きていく根源部分について静かに問いかけてきます。貧しかったおじいさんは姫を得て
金銀も手にします。初めは子どもを授かったことが嬉しくて、丈夫に育つことだけを願っていますが、
裕福になるにつれて、姫の幸せを自らの望みにすり替え、それが姫の幸せだと思い込んでしまうのです。
ラフなスケッチのようにも見える作画ですが、隅々まで神経が行き届いており計算されつくした絵づくりに
なっています。姫が怒った時は荒々しく、心穏やかに野山で遊ぶときは柔らかく。
姫の付き人になる女の子が独特のキャラクターで笑いを誘い画面に変化を与えています。
ラスト、そのワンカットに高畑監督の言いたかったことが集約され胸を突きます。
そしてエンディングで流れる二階堂和美(大竹在住)が歌う主題歌「いのちの記憶」が追い打ちをかけるので
す。そこには作品の多くがファンタジーだった宮崎アニメとは全く違う「今」を見つめた高畑アニメの真
骨頂があります。これはじわっと目にきてそして後を引く作品です。
余談ですが作中、子どもたちが歌うわらべうたも高畑監督自身が作詞・作曲しています。
2013/11/23 八丁座 <紅孔雀>
夢と狂気の王国
2013年公開 日本映画 ドキュメンタリー
上映時間 1h58
「エンディングノート」で脚光を浴びた砂田麻美監督が撮った
スタジオ・ジブリのドキュメンタリーです。
高畑監督はほとんど登場しません。大半が宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーの話で占められています。
今まで数々のジブリもので良く知られているエピソードが多いのですが宮崎監督が引退を決めた本音がチラリと
洩れたり、「かぐや姫」を担当している西村プロデューサーが言う「高畑監督がいなかったら、ジプリは無かっ
た」など、この映画で初めて知ったこともありました。さらに鈴木プロデューサーが「ジブリは何故日本テレビに
しか出さないのか」などのエピソードも語られています。そもそも「かぐや姫」は「風立ちぬ」と同時公開の予定
でした。鈴木・西村プロデューサーもそのつもりで行動しています。ところが「かぐや姫」が大幅に遅れることが
判明、両プロデューサーが苦悩します。二人は「本当に『かぐや姫』を(高畑監督が)完成させる気があるのだろ
うか」とまで考え込んでしまうのです。しかしその後の二人の割り切り方と次への行動力に感心します。
両監督はお互いを尊敬しつつ張り合ってもいます。宮崎監督はある時は「パクさん(高畑監督)の『アルプスの少
女ハイジ』は誰にも作ることのできないアニメです」と絶賛します。しかしまたある時には「パクさんは性格破綻
者です」とも言うのです。このドキュメンタリーは〈二人の狂気の王国〉のお話しです。
2013/11/16 バルト11<紅孔雀>