2013/2月掲載
「塀の中のジュリアス・シーザー」「桐島、部活やめるってよ」「しあわせカモン」ー2「レ・ミゼラブル」」
「96時間/リベンジ」「ファースト・ポジション」ー2 の短評
塀の中の
ジュリアス・シーザー
2012年 イタリア映画 上映時間1h16 <予告篇>
東京在住の会員の友人から届いた感想記です。
広島では3月9日よりサロンシネマにて3週間上映予定
銀座テアトル シネマで観てきました。 タヴィアーニ兄弟監督のベルリン映画祭グランプリ他を受賞した作品。
本物の刑務所内で服役囚たちが、シェークスピアの《ジュリアス・シーザー》を演じています。
観ていると、ずんずん現実と虚構が曖昧になってゆく不思議な感覚にとらわれました。
演劇の魅力を兼ね備えたドキュメンタリーのような作品。イタリア親爺連中のめっちゃ濃い面構えが迫力満点。
ある意味、誰しもが役者になれるのかもしれません。
桐島、
部活やめるってよ
<予告編>
メンズデーに見たのは、「桐島 部活やめたってよ」。気持がヒリヒリしながら見ました。
何か言うと、「ハー?」と語尾揚げで、何言ってんの?みたいに返されると、次が出てこない気まずさ。
教師には見えない、がっちりしたヒエラルキーの中で毎日を送る高校生は、何と大変なことか!!
文化系クラブの者が、ゾンビとなって、体育系クラブの連中を食いちぎるという白日夢は、実感に
充ち満ちてました。
中原監督の「桜の園」も、高校生のナマの言葉が息づいてましたが、この映画もそうです。
しかし、自分は、今の高校生では生きられないなと思わされた映画でした。(い)
しあわせカモン
2009年製作 日本映画 上映時間1h58 <予告篇>
STAFF
監督/脚本・・・中村大哉
撮影・・・・・ 山本圭昭
音楽/主題歌・・ 松本哲也
CAST
扶美江・・・鈴木砂羽
哲也・・・・石垣佑磨
哲夫・・・・今井雅之
堀江先生・・沢田亜矢子
高野医師・・大和田伸也
映画の元になった自伝を書いた松本哲也の記事を読んだ。「父は暴力団幹部。母は麻薬中毒。預けられた母の
実家で虐待され、学校ではいじめを受け、養護施設に預けられる。」これで、どうやってまともな人格が形成
出来るのだろうと思った。映画を見て、大きな愛に育まれたのだと分った。
まだあどけなさを残した女性が、プロレスのポスターをじっと見ていたら、ヤクザのお兄さんがチケットをくれ
て、「かわいいんだから、地味な格好をしないで、派手な服を着なさい。」と言って去っていく。
それからすぐに、派手になり、見違えるほど美しくなって、そのお兄さんと結婚する。そして、哲也が生まれる。
後はお決まりの転落人生なのだが、悲惨なところは端折ってあるので、あまり辛くならない。ただ、親子で一緒に
暮らしたいという強い思いが伝わって、「しあわせ」という言葉が出てくる度に涙がこぼれた。
「しあわせになろう」「しあわせにするから」「しあわせになってください」どれも、心からの言葉だから、
私の胸を打ったのだろう。これが、お蔵入りだったなんて、もったいないにも程がある。(みかん)
不器用だけど懸命に生きた「母と息子」の真実の物語だ。その「母」を演じたのが、僕の大好きな『愛の新世界』
で、存在感を示した鈴木砂羽。今回も、体当たりの演技で、はまり役だった。ヤクザとの結婚や薬物依存という
波乱の人生を、見事に演じ切っていた。実はお蔵入りになっていた。それが、尾道市で開かれた、2011年の
「お蔵出し映画祭」でグランプリを獲得、ロードショーとなった。主題歌の「ユキヤナギ」も胸にジンと来る。
息子のモデルである松本哲也本人が歌ったものだ。誰にでも、幸せは、来るよ。(F)
レ・ミゼラブル <予告篇>
主役のヒュー・ジャックマンを始め、出演者全員の歌が上手いのに驚いた!
イギリスやフランスなど世界各国で大ヒットロングランのミュージカル
舞台劇を映画化しただけのことがある。むだなセリフ(歌詞)がなく、
2時間40分の長さをまったく感じさせない。第70回ゴールデン・グローブ賞主演男優賞及び主演女優賞を
受賞。第80回アカデミー賞8部門ノミネート。原作者のユゴーが大のナポレオン嫌いだったことが分かる
オープニングに注目あれ。(T)
96時間/リベンジ <予告編>
96時間の続編。前作での敵が、復讐してくるというストーリー。
確かに、続編を作る度に行った先で新しい敵に襲われるというよりも
若干ましかも。でも、小さい部族間の話ならともかく。
只悪役にも、親兄弟がいるというのは、この手の作品ではめずらしい。
とはいえ、敵がしていたのは、女子人身売買、テロとかじゃないから非は全部向こう。観てる方は良心は痛まない。
ポストハリソン・フォードの活躍を楽しめばよい。でも、タイトルがまったく無関係だ『元CIAの親父頑張る』
とかすれば良かったのにねえ。(Y)
ファースト・ポジション
<予告編>
9才から19才の若いダンサーを対象にした世界最高峰の
バレエコンクール、ユース・アメリカ・グランプリでの入賞を
目指す6人を追ったドキュメンタリー。
才能と情熱、家族のサーポート、全てがそろっても、怪我で諦めることになるかもしれない厳しい世界で、
一にぎりのプロを目指して努力する姿に励まされた。才能も情熱も姉ほどではないが、母親の希望でレッスン
に通っている10才の弟が微笑ましい。きついことを言われてもへこたれず、本番に強い。
自分のことがよく分って いて、どんな世界でも生き残れそうだ。(みかん)
ユース・アメリカ・グランプリは、世界の名門スクールやバレエ団への足がかりとなるバレエ・コンクールです。
世界中から毎年5000人を超える応募がありますが、ニューヨークで行われる最終選考に残るのは200~300人で
す。映画の中で最も気になったのがミケーラとジョアンです。西アフリカ シエラレオネ生まれのミケーラは、
内戦で 両親を殺され孤児院にいたところを運よくアメリカ人夫妻の養女になることができました。
その時4歳でした。そして現在14歳。実の子の様に愛し、ミケーラのために環境を整える両親に心打たれます。
彼女は黒い肌、筋肉質な体型というハンデをよく知っていてそれを跳ね返す決意なのです。本番前の特訓の成果も
上々でしたが足を痛め出場が危ぶまれる事態になります。しかし、ミケーラはそれを乗り越えようとします。
自分自身の明日のために・・・。
16歳のジョアンは、故郷のコロンビアで才能を見い出され、一人で渡米します。たゆまぬ努力は家族のため
なのです。貧しいコロンビアに帰っても仕事はなく、この道で頑張るしかありません。子供たちに課せられた
あまりにも過酷な人生に言葉がありません。 2013/2/5 サロンシネマ(紅孔雀)