「イーダ」 「ジャージー・ボーイズ」 「猿の惑星:新世紀(ライジング)」 「プロミスト・ランド」


 

 

 

 監督/脚本・・・パヴェウ・パヴリコフスキ

 

 出演 ・・・・・アガタ・クレシャ / アガタ・チュシェブホフスカ

 

         ダヴィッド・オグドロニック

 

 

 

 2013年製作 ポーランド・デンマーク合作映画 上映時間 120 <予告篇>

 

 

モノクロでスタンダード画面です。静謐な映像の中にイーダとその叔母ヴァンダの人生が

 

凝縮されています。アンナ(イーダ)は修道院で育てられ自分は孤児だと思っています。

 

ある日、院長から叔母がいることを告げられ、修道女になる前に会ってくるように言われ

 

ます。訪ねて行った叔母から本当の名前はイーダでユダヤ人だと教えられるのです。両親

 

は既に亡くなっていると伝えられますがイーダは墓に行きたいと言います。しかし、ヴァ

 

ンダにも墓の所在は判りません。そこでふたりはイーダの両親が住んでいた村を訪ねる事

 

にしますが・・・。イーダがヴァンダに会うまでは画面は静かに進みます。しかし、イー

 

ダの両親が住んでいた家を訪ねるあたりから、次第に緊張感が漂いはじめます。ラスト近

 

くでヴァンダの秘密も明かされるのですが、イーダは覚悟を決め、自らの人生を選択する

 

のです。重い事実を終始淡々としたペースで描いています。セリフは必要最小限にそぎ落

 

とされ、過度の説明や大袈裟な演技はありません。だから画面に映るイーダとヴァンダの

 

行動を通してその心情を推し量るしかないのです。監督が観客を信頼していると思わせて

 

くれるのです。この映画は万人受けする作品ではないかもしれませんが、しっかりと余韻

 

を残してくれます。  <紅孔雀>

 


 

 

ジャージー・ボーイズ

 

 

2014年製作 アメリカ映画 上映時間214 <予告編>

 

監督:クリント・イーストウッド

 

演:ジョン・ロイド・ヤング / マイケル・ロメンダ /クリストファー・ウォーケン

 

 

 

 

名前で観客が呼べる数少ない監督のひとり、クリント・イーストウッドが肩ひじ張ら


ず軽妙に1960年代を駆け抜けた伝説のポップスグループ「ザ・フォー・シーズンズ」の


栄光と挫折を描いています。

 

ニュージャージー州の貧しい地区に生まれたフランキー・ヴァリ、ボブ・ゴーディ


オ、ニック・マッシ、トミー・デヴィート。希望のない町で暮らす4人は、バンドを組み


自分たちの楽曲で夢のような成功をつかみ取ります。

 

彼らはザ・フォー・シーズンズとして、『シェリー』、『恋はヤセがまん』、『バ


イ・バイ・ベイビー』、『君の瞳に恋してる』といった数々の名曲をヒットさせ、音楽


界に不滅の伝説を打ち立てていきます。

 

しかし、その栄光の裏には、裏切りと挫折、別離、家族との軋轢といった不幸があっ


たのですが、それらをイーストウッドはあえて深刻な話にはせずポップス映画らしくテ


ンポよく見せてくれます。

 

バンドの4人が時折りこちらを向いて自分の思っていることを話しかけてくるのも新


鮮で面白い。クリストファー・ウォーケンが心優しきマフィアのドンで登場。渋く余裕


たっぷりに演じているのも嬉しい。更に「グッドフェローズ」(1990年マーティン・ス


コセッシ監督)などの名優ジョー・ペシがこのバンドのメンバー集めに大きな役割を果


たしていたことも「へぇー」でした。

 

 

<紅孔雀>

 


 

 

猿の惑星:新世紀(ライジング)

 

 

2014年製作 アメリカ映画 上映時間 211 <予告編>

 

監督・・・マット・リーヴス

 

出演・・・アンディ・サーキス / ジェイソン・クラーク / トビー・ケベル

 

 

 

SF映画の金字塔「猿の惑星」を引き継いだ「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」の


続編です。前作から10年後の世界を舞台に物語は展開していきます。

 

絶対的リーダー、シーザーに率いられ独自の文明を築き始めた猿の集団があり、一方


では、蔓延したウイルスによって人類は壊滅的なダメージを受けており、わずかな生存


者グループは、荒れ果てたサンフランシスコの一角で身を潜めるように暮らしていまし


た。

 

そんなある日、電力が底をつきかけた人間たちは、ダムの水力発電を利用しようとし


て知らないうちに猿のテリトリーに足を踏み入れてしまい一触即発の危機を招きます。


最悪の事態だけは避けたい平和主義のマルコムは、シーザーと接触し、次第に信頼関係


を築いていきます。

 

猿と人間という単純化された話になっていますが、この物語はそのまま現在地球上で


起きている「戦争への道」の縮図です。シーザーとマルコムは互いに理解し、話し合い


で解決しようとしますが、どちらにも信頼よりも疑念と恐怖が先に立ち、短絡的思考で


憎しみを増幅させ戦うことで決着させようとするグループが存在します。

 

その象徴が猿グループの武闘派コバです。その昔シーザーは人間に可愛がられ、コバ


はいじめられた経験を持っていました。そして、ほんの小さな誤解とそれを利用する者


たちの思惑によって闘争の幕が開いてしまうのです。なぜこんなことになってしまった


のか――。

 

平和を構築するには相手への理解と寛容そして時間が必要です。シーザーが言います


「戦えば多くの仲間が死ぬことになる」。現在の世界を見るとき人類は果たして何を学


んできたのだろうかと思ってしまいます。

 

意識的に色調を押さえた映像や重厚な音楽が観客の緊張感を高めます。残酷なシーン


はありませんから安心して鑑賞できます。CGの進歩にも驚きます。迫力ある映像、示


唆に富んだストーリー、必見です。

 

<紅孔雀>

 


 

 

プロミスト・ランド

 

 

2012年製作 アメリカ映画 上映時間146 <予告編>

 

監督:ガス・ヴァン・サント

 

出演:マット・デイモン / フランシス・マクドーマンド / ジョン・クラシンスキー

 

 

現在エネルギー問題の話題の中心、シェールガスを扱っている映画。シェールガスの


掘削権を安値で買い取るために大手エネルギー会社グローバル社のエリート社員ス


ティーヴが、農場以外は何もない田舎町のマッキンリーにやってくる。

 

そこには現地をよく知る調査員がいて、二人でコンビを組み住民にバラ色の話を吹き


込み次々と契約を成立させていく。"楽勝"と思われたとき、高校の科学教師フランク


が「自然が失われ環境が悪化する」と反対を唱え賛否は住民投票に持ち込まれる。そこ


に環境保護団体のダスティンがやってきて、採掘反対を掲げ住民の説得を始め


る・・・。ラストで企業の悪知恵に驚く。

 

この手の映画は反対派、賛成派に分かれ、ともすれば暴力沙汰になりがちだが、この


映画では登場する賛成派・反対派の住民が理性的な対応をする。そこが新鮮であり、困


窮する農民を放置したまま抜本的な手を打たない政府に対する皮肉も忘れないところが


いい。

 

主演のマット・デイモンは、ダスティン役のジョン・クラシンスキーと共同で脚本を


執筆しプロデューサーも務めている。製作者たちの気骨を感じる。

                                                  <紅孔雀>