ぼくたちの家族
2013年 日本映画 1h57 <予告編>
監督:石井 裕也 原作:早見 和真
出演:妻夫木 聡/原田 美枝子/池松 壮亮/長塚 京三
母の突然の病気によって、バラバラだった家族が一つになる物語。
物忘れがひどくなり、末期の脳腫瘍で余命1週間と宣告される。その母は家族にひた
隠しにしてきた本音を吐露。突然訪れた事態に父は取り乱し、社会人の長男は言葉をな
くし、大学生の次男 は平静を装うとする。残された3人はさまざまな問題と向き合いな
がら最後の悪あがきを決意。
『舟を編む』の石井裕也監督が「家族の再生」と「新しい家族」を描く。これが、ぼ
くたちの、ぼくたち世代の新しい家族像―。監督のメッセージが聞こえて来そうだ。
<F>
八丁座で石井監督の「ぼくたちの家族」を土曜のレイトで観てきました。
原田美枝子の顔のアップ、すれ違う友達との会話、都内から長い列車移動で最寄りの
駅へ、そして我が家のある郊外戸建て団地の俯瞰。冒頭からのシーンに続き、夫、男、
次男とのやり取りで、「家族」の様子、シチュエーションがほぼ分かります。
最初の音楽が、どこか懐かしいアコースティックギターのメロディです。ラストの強
いドラムの音楽も印象的です。広島出身の音楽家(渡邊崇)だと紹介されている記事を
読みましたが、知らずでも印象的でした。
映画ですが、病気が判明した母親をめぐって動き出します。転機は、団地を俯瞰しな
がら、「悪あがきするぞ」という長男の言葉からです。先がどうなるやら、本当に大丈
夫かな?という終わりですが、増える「家族」との出発に少しホッとします。
出てくる誰かの中に、自分のどこかを見つけそうな映画です。
<ストーン>
ブルージャスミン
2014年日本公開 アメリカ映画 上映時間1h38 <予告編>
監督:ウディ・アレン
出演:ケイト・ブランシェット/アレック・ボールドウィン/サリー・ホーキンス
ジャスミンは、元はジャネットだったのですが平凡だからという理由でジャスミンに
変えたのです。冒頭の機内、隣の老婦人に自分の生活の豊かさを一方的に話すジャスミ
ンですが実態はニューヨークで夫が破算、逮捕され妹の住むサンフランシスコにやって
くるところなのです。
一文無しになったはずなのになぜかファーストクラスに乗っています。ジャスミンは
精神の安定を欠き薬が離せません。元のセレブな生活が忘れられず、もがきます。サン
フランシスコで理想の相手に出逢っても自分を良く見せるために嘘をついてしまいま
す。虚構の中に生きている彼女に罪の意識は希薄です。
「夢見る夢子」全面展開なのですが呆れるよりも憐れ感が漂います。現在とニュー
ヨーク時代のジャスミンの生活が交互に描かれ、次第になぜ破産したのか、どんな暮ら
しだったのかが明らかになっていきます。ケイト・ブランシェットがこれ以上はない演
技で、独自の世界に逃げ込むジャスミンを過不足なく演じて圧巻。アカデミー主演女優
賞も納得です。
洗練された会話やテンポのいいストーリーは健在で、さすがにウディ・アレンだと思
わせます。
<紅孔雀>
チョコレートドーナツ
2012年製作 アメリカ映画 上映時間 1h37 <予告編>
監督:トラビス・ファイン
出演:アラン・カミング/ギャレット・ディアハント/アイザック・レイバ
今から35年前の1979年、カリフォルニアが舞台です。シンガーとしての成功を夢見な
がらゲイバーで歌っているルディは、ある夜客としてやってきた検事のポールと出逢い
二人はすぐに惹かれ合います。
ルディが暮らすアパートに、ダウン症の子どもマルコと薬物依存症の母親が住んでい
ます。ある日、マルコの母親は薬物所持で逮捕され、マルコはお気に入りの人形を抱い
たまま、強制的に施設に入れられます。
翌朝、ルディが隣を覗くと、施設を抜け出し小さくうずくまったマルコがいました。
ポールとルディは、従兄だと偽ってマルコを引き取り一緒に暮らし始めます。
三人で暮らし始めて一年が経ったある日、ポールとルディがゲイのカップルであるこ
とが周囲にバレてしまいます。そして、関係を偽ったことが原因で、マルコは家庭局に
連れて行かれ、ポールは仕事を解雇されます。開き直ったポールは、ルディとともにマ
ルコを取り戻すため、勝ち目のない裁判に挑みます。
この映画は、社会の偏見と闘う二人を通して、司法を取り巻く偏狭な人たちをあぶり
だしていきます。ラストでのルディの歌声が胸に沁みます。
アメリカ映画にはめずらしくラストは辛口です。ちなみに「チョコレートドーナツ」
とはマルコが大好きだったお菓子のことです。
<紅孔雀>
WOOD JOB!(ウッジョブ)
~神去なあなあ日常~
2014年 日本映画 1h56 <予告編>
監督:矢口 史靖
出演:染谷翔太/長澤まさみ/伊藤英明
山を相手に仕事見習いをする若者を主人公にした矢口史靖監督の最新作。原作は、今回が4作
目の映画化となる三浦しをん。
三重と奈良の県境にまたがる広大な森林を舞台に、山の樹を育て、使う昔ながらの山の職人さ
んたちが描かれる。
矢口監督が「今回の撮影では、役者さんたちみんなに、痛い、きつい演技を実際にこなして
貰った」と話しているだけあって、主役の染谷将太の動きにもなかなかキレがある。
口の悪い先輩役に扮する伊藤英明のふんどし姿が凛々しい。全編笑いどころ満載!
(せん寿)
原作は、「舟を編む」の三浦しをんの「神去なあなあ日常」です。去年の1月に読んで、面白
くて周りに勧めましたが、タイトルが妙なのか反応は今ひとつでした。
それが、矢口史靖監督で映画になると聞き、彼の上手なコメデイタッチが活かされればと期待
して観ました。都会の若者が、何を間違ったか、林業の研修で、ケータイも圏外の山奥へ。そこ
での生活は・・?と言えば、よくあるパターンですが、辞書作りと同じで、林業という「仕事」
がしっかり丁寧に描かれているのと、伊藤英明がいいです。
私は予告編でしか見てない「海猿」も、肉体を酷使する力仕事ですが、この映画の「山人」の
力仕事振りはぴったりでした。冒頭のガム飛ばしから始まり、随所に笑いもあり、大詰めの祭り
も迫力がありました。長澤まさみもよく、時間があればどうぞ。
なお、監督名までのエンドロールが終わっても、席を立たないように。最初に繋がる「おま
け」シーンがあります。
(ストーン)
アナと雪の女王
2013年 アメリカ映画 1h42 <予告編>
監督:クリス・バック/ジェニファー・リー
出演(声):クリステン・ベル/神田沙也加 イディナ・メンゼル/松たか子
創立90周年を迎えたディズニーが放つ久々の大傑作!ミュージカルやアニメが苦手な人も心を
揺さぶられること請け合いです。2Dで観たのですが、2回目は3Dで、とか3回目は「みんな
で歌おう」鑑賞会などリピーターが多いのもうなずけます。
製作総指揮が、アニメーション映画「トイ・ストーリー」のジョン・ラセター。彼は、何年か
前に広島国際アニメーションフェスティバルのゲストとして、来広したことがあります。ヒュー
マニズムに溢れる作風のプロデューサーですが、今回の「アナと雪の女王」にも見事に、その姿
勢が貫かれています。
場面ごとの細やかな表現や、なめらかな動き、それらが全て流れる音楽にピタッと調和し、観
る者を飽きさせません。スタジオ・ジブリ作品とは少し趣きが異なるアニメーションの世界に引
き込まれます。
雪の女王役の吹替えをしている女優、松たか子が、あんなに歌が上手いとは!今年の広島フラ
ワーフェスティバルにゲスト出演した歌手、MayJ.が歌うエンディングの主題曲もお聴き逃
しなく!
(せん寿)
ディズニー・アニメーション史上初めてのダブルヒロインで話題になり、“よかった!”という声をあちこちで
聞き、劇場へと足を運んだ。
普段から字幕が苦手な私は2D吹替版で見てみた。劇場は満席、ほぼ家族連れ。何の予備知識
もなく見に行ったのがよかったのか、みるみる間にストーリーに惹きこまれた。
物語は2人の姉妹が軸に描かれている。姉のエルサは、ある事情により感情を内に秘め、人に
心を開かない。一方、妹のアナは、感情をオープンに表現し、人を簡単に信じ、頭で考えるより
先に行動するタイプ。正反対の2人だが、お互いを思いやる心と強い絆で結ばれている。
こども向けのアニメかと思いきや、とんでもなく奥が深かった。さらに音楽。すっかり聞き馴
染んだ「Let It Go~ありのままで~」。歌詞について深く知らないで映画を鑑賞したが、映画
を見ると“なるほど!”と納得できる。その上、見事なまでに歌詞と主人公の動きがマッチして
いる。
心の中で一緒に両手を広げたくなる。この曲、映画の中でエルサが歌うシーンは松たか子、エ
ンディング曲ではMay.Jと、2人が歌っているのも面白い。どちらも力強い歌声には聞き惚
れた。
劇中にかかる曲は他にも心に残る曲はいくつもある。その中のひとつ、「雪だるまつくろう」
何度か出てくるが、アナが幼いころ歌う時と、大きくなってから歌う時の違いが、私の感情を熱
くさせた。表情や背の高さだけでなく、歌声からも成長した様子が一層伝わってくる。
この映画はリピーター率が高いと聞いた。普段同じ映画は1度観ると満足してしまうのだが、
初めて、あと2回は見たい!と思った。2D(吹替え/字幕)3D(吹替え/字幕)に加え、みんなで
一緒に歌おう版も導入されたことにより、次はこのパターンで…という人もいるそうだ。
ストーリー・音楽はもちろんなのだが、映像も見逃せない。色の透明感やデザインも素敵だっ
た。
最後に、見逃してはならないのがディズニー映画ならではの、本編前に上映される短編作品。
「ミッキーのミニー救出大作戦」。これがかなりおもしろい。スクリーンの向こう側とこちら側
で、ミッキー達が追いかけるストーリーなのだが、モノクロ映像とCGが同時に楽しめる型破り
な面白さ!
必見!!
大きなスクリーンならでは体感できる映像。まだ見てない人はぜひ劇場へ。
(Mちゃん)
オール・イズ・ロスト
~ 最 後 の 手 紙 ~
2013年製作 アメリカ映画 上映時間1h46 <予告篇>
監督/脚本:J・C・チャンダー
出演:ロバート・レッドフォード
冒頭、レッドフォード自身のナレーションで、おそらく家族に向けてだろう悔恨が語られます。「頑張ったが上手くいかなかった。すまない・・・」と。男は人生をリセットすべくヨットで一人旅に出ています。
ある日、船内に流れ込む水音で目覚めると巨大な漂流物・コンテナの角が船体に当たり穴が開いていました。全てを失い諦めたような人生でしたが男はここから黙々と生きるための手段を取り始めます。その行動は長かった人生で得た経験に裏打ちされているのでしょうが実に冷静で沈着です。
やがて嵐に見舞われてマストを失い航行不能に陥り救命ボートに乗り移ります。多くの物を失い漂流が始まるのですが男は生きることを諦めません。木の葉のようなボートのすぐ傍を巨大なコンテナ船が通過して行きます。発煙筒を焚きますが気づいてもらえません。漂流したコンテナによって遭難したことと考えあわせると実に皮肉なシーンです。
そして文字通り<オール・イズ・ロスト>となるのですが暗示的なラストが待っています。レッドフォードが人生に疲れた男を自然体で演じています。出演は彼一人だけです。だからセリフもほとんどありません。役名もありません。76歳のレッドフォードが1時間46分を緩むことなく魅せてくれます。
<紅孔雀>