「海街diary」 「愛を積むひと」



diary


2015年製作 日本映画 上映時間206 <予告篇>


監督・脚本:是枝裕和  原作:吉田 秋生


出演:綾瀬 はるか / 長澤 まさみ / 夏帆 / 広瀬 すず / 大竹 しのぶ 樹木 希林 /

     風吹 ジュン / リリー・フランキー

 

処女作『幻の光』から20年、ますます磨きがかかった是枝ワールドが堪能できます。撮影は季


節ごとに一年間に渡って行われました。


誰も知らない』(04)、『歩いても 歩いても』(08)、『そして父になる』(13)、是枝作


品は限られたグループ、家族の中でストーリーが展開し、外へ出ていくことはありません。た


とえそれが社会的に大きな問題であったとしてもです。この手法をすっかり自家薬籠中のもの


にしてしまった是枝監督は、余裕しゃくしゃくで物語を進めていきます。


両親不在の香田家四姉妹(末の〈すず〉は異母妹)を中心に展開していくのですが、家族間に


深刻な問題が起こるわけでもなく、喧嘩をしても直ぐに通常の生活に戻り決定的な家族崩壊と


はなりません。でありながら観るものを飽きさせません。長女・幸(綾瀬はるか)ら三姉妹を


置いて出て行った母・都(大竹しのぶ)との再会シーン、墓参への行き帰りの幸と都のやり取


りは見応えがあります。日頃から何かと姉妹のことを気にかけていてくれる菊池のおばちゃん


(樹木希林)が登場すると、その自然体ぶりに心がなごみます。


ロケ地は鎌倉ですから、その作風と相まってオールドファンならいやでも小津安二郎を思い出


します。是枝監督も小津作品を繰り返し鑑賞したに違いありません。今までやらされ感のあっ


た綾瀬はるかが、的確な是枝演出にも助けられ家族を纏めていく長女の役を見事に演じきって


いるのが大きな収穫です。


余談ですが舞台が鎌倉ですから「江の島電鉄(エノデン)」が時折り登場します。このエノデ


ンは黒澤明監督の「天国と地獄」でも事件解決への大きなキーになっています。

(紅孔雀)




積むひと 


2015年 日本映画 205 <予告編>


監督・脚本:朝原 雄三  


出演:佐藤 浩市/樋口 可南子/北川 景子

 

『釣りバカ日誌』(1420作)、『武士の家計簿』(2013年)の朝原雄三監督が、エドワー


ド・ムーニー・jrの小説「石を積むひと」を、日本に移し映画化した。


篤史(佐藤浩市)と良子(樋口可南子)は、第二の人生を大自然に囲まれた北海道で過ごそ


うと、東京下町の町工場をたたんで移り住む。仕事一筋で、暇を持て余す篤史に、良子は元の


住人が手掛けていた、石塀づくりを頼むのだった。ところが、妻の持病が悪化しあっけなくこ


の世を去る。悲嘆にくれる篤史に、思いがけない亡き妻からの手紙が届く。そして、妻に導か


れるように石塀を完成させようとするのだった。


ハッピーリタイアは、明らかに欧米の思想で、貧乏性の日本人にはなじめないところもある


が、高齢化の一途をたどる日本でも、第二の人生の過ごし方は大きな課題となろう。そんなシ


ニア世代にぴったりの映画。


北海道の真ん中に位置する美瑛町の、四季折々の美しい風景を織り込んで、妻との絆を再確


認し、若者の過ちを許し、断絶していた娘とも和解する一年間が描かれる。不器用な夫を佐藤


浩市が、明るく支える妻を樋口可南子が好演。娘(北川景子)のアルバムの写真、かわい過ぎ


る!


「石塀は大きくて立派な石だけで出来ているんじゃない。小さくて不恰好な石もちゃんと役


割を果たしている」という味わい深い言葉。そしてラストでの「古い石がその上に積まれる新


しい石を支えるように、私たちが毎日を精一杯生きることが、次の世代の支えとなる」という


言葉が感動的に響く。夫婦で、親子でどうぞ。                

(OK)