トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
2015年 アメリカ映画 上映時間:2h4 <予告編>
監 督:ジェイ・ローチ
出 演:ブライアン・クランストン/ダイアン・レイン/ヘレン・ミレン
八丁座で『トランボ』を観ました。地味な映画で、初日の夜のためか、10数人でした。
D・トランボの名前を知ったのは、40数年前の大学生時代に『ジョニーは戦場へ行った』
(71)の脚本、監督ということからでした。 彼がハリウッドから「赤狩り」の嵐で追い出され
ながら、『ローマの休日』(53)『黒い牡牛』(56)などのアカデミー賞受賞の脚本を書いて
いくことは、少しずつ判ってきました。
この『トランボ』は、ハリウッドの彼の脚本家としての半生を、少し駆け足で描いています。
思えば、下院非米活動委員会の査問、投獄、追放時代の脚本作りなど、余りにも激しく普通な
らめげてしまいかねない時代です。なのに彼は、その才能、信念、大らかさで乗り切ります
が、ちょっと淡々と描きすぎかな?
実名で、J・ウエインやカーク・ダグラスのちょい似さんが出ています。私の業界で言えば、
戦前に、治安維持法で捕まった人を弁護すれば、自分も捕まりかねないのに、それでも法廷に
立つ凄さ、勇気です。とてもかなわない、自分にはできない生き方ですが、それができた裏
に、しっかり者の妻の存在が。
その妻役のダイアン・レイン、さらに長女がいいですね(D・レインは、W・ヒル監督の『ス
トリート・オブ・ファイアー』で初見、魅力的なおばさんへ変身)。 ラストのスピーチ場面
は、この手の伝記映画の常套ですが、本心からのいいスピーチですね。
私は、『ジョニー・・』後は、リアルタイムで『フィクサー』(68)、『パピヨン』(73)、
『ダラスに熱い日』(73)などは観たものの、未だ『ローマの休日』や『スパルタカス』
(60)はテレビでしか観られず。一度大きなスクリーンで、じっくり観たいものです。
(ストーン)
日本で一番悪い奴ら
2016年 日本映画 2h15 <予告編>
監督:白石和彌 (R15)
出演:綾野剛/YOUNG DAIS/植野行雄
『凶悪』に続く白石監督の最新作にて最大の問題作。日本で一番悪い奴ら、その名は警察。別名、「日
本最大の暴力団」。この権力中枢の組織ぐるみ犯罪を堂々のエンターテイメントに仕上げた監督はじめ
スタッフのみなさんに拍手である。
ただし、この内容、すでに以前観たような記憶が、『ポチの告白』である。2005年製作、2009年公開
の高橋玄監督作品だが、実直な警官が、警察ぐるみの犯罪に巻き込まれたあげく切り捨てられていく姿
を描き、警察とマスコミの腐敗を衝いた社会派作品だ。その作品内容と二重写しになる。
綾野剛扮する諸星要一は、柔道だけが取り柄で北海道警察に採用された駆出し警察官。「なぜ警察官
になったのか」の問いに「公共の安全を守り、市民を犯罪から保護するため」と精一杯答えるのだが、調
書ひとつまともに書けない。ある日、先輩敏腕刑事から、S(スパイ)を使って点数を稼ぐことを教わり、
愚直に実行していく。たちまち手柄を立て、表彰され、水を得た魚のごとく自由闊達に泳ぎまくるのだっ
た。
だが、それもつかの間、ついに歯止めがきかなくなり、毒を食らわば皿まで、と悪事に手を染め、転落し
ていく。その26年間の軌跡を、ときに面白く、ときに痛快に描き切る。難点は女性の扱いか。諸星と関
わるホステスはともかく、婦警の方は何とかならんかったんか。
ともかくも、綾野剛のはじけっぷりが何ともかわいくもあり、最後まで憎めなかった。特に、逮捕され接見
に来た弁護士に、上に言われて仕方なくやったんだろと言われたときの返答に、変わらぬ日本人の心
性をみたようで哀しい。
(OK)