光をくれた人
2016年 アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド合作映画 2時間13分 <予告編>
監督:デレク・シアンフランス
出演:マイケル・ファスベンダー/アリシア・ビカンダー
灯台守の夫婦の話ということで、長閑かな展開を予想していたら、意外にも、テレビドラマ『母になる』の
展開によく似ていた。『母になる』の場合は、実の子どもを奪われた産みの母が主人公で、偽って子ども
を育てていたもう一人の母が、得体の知れぬ闇を抱えていたことがだんだん明らかになっていく。
それに対して、こちらの映画では、戦争や流産のために闇を抱えていた主人公夫婦が、突然現れた赤
ん坊をこっそりと育てることになり、育ての母は、夫を始め、育てた子を引き離そうとする人々に対し、激
しく敵意を表すようになる。産みの母も当然その対象であり、子どもが産みの母の許に戻されてからもな
お、張り合おうとする。
設定は違うけれど、『アイ・アム・サム』の娘の名もルーシーで、実の子どもでありながら、公的機関から
養育能力を疑われ、引き離されることになり、里親と張り合い、公的に認められた里親の方も、ルーシー
を何とか懐かせようと悩んでいた。サムの場合は、最後に里親との間で望ましい協力関係を見出したよ
うに見受けられていた。
『母になる』の場合は、サムの場合と同様の協力関係の模索がみられたけれども、ドラマの展開上、そ
の成立には困難がつきまとっていた。『光をくれた人』の場合は、産みの母の家族内での絆づくりは、育
ての母とは切り離されることになった。結末では、育ての「親」の許に、改めての「光」が差し込むことに
なる。こちらの作品についても、産みの母と育ての母とが切り離されることなく、協力関係が模索されて
も良かったのではないか、と思った。 (竪壕)
ハクソー・リッジ
2016年 アメリカ・オーストラリア合作映画 2時間19分 <予告編>
監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド
映画の題名である「ハクソー・リッジ」は、日本で戦場になった沖縄にある切り立った断崖の呼び名で
あった。そこに出向くに際して、上官は、日本兵に対して丸腰で対峙するなんて正気ではない、と武器を
持って戦うことの正当性を主張する。
アメリカ軍は、艦砲射撃で一時的に戦闘を有利に運びながらも、「ハクソー・リッジ」と呼ばれる断崖を兵
士が上陸して白兵戦を進めると、日本兵が塹壕から繰り出し、白旗で降参したようにみせかけて、騙し
討ちを受け、一進一退を繰り返し、アメリカ軍の戦況は思わしくない。日本軍の防戦も必死で、アメリカ
兵も、日本兵に対する恐怖心で一杯だったことがわかる。
映像で、アメリカ兵の夥しく悲惨な死に様や死体の群れが描かれ、さらには損害のない兵士たちが撤退
し、殺される悪夢に苛まれたばかりの丸腰の主人公ドスが残り、生き残ったアメリカ兵に止めを刺そうと
する日本兵の目を巧みに回避しながら、断崖の上から重傷を負った兵士をロープで下ろしていく。スリリ
ングな展開であり、最後まで撃たれなかったのは、極めて幸運だったというしかない。一瞬だけ、銃を渡
され、発砲しかねない情況もあったが、撃たずに済み、名誉を保った。
ドスが使命を全うしようとしたときには、体力もかなり必要とされ、私だったら、「臆病者」という汚名を甘
んじて受けて引っ込んでおいた方が楽だと思ってしまう。「英雄」と称えられたのは、そうした過酷な情況
で、「良心的戦争協力」を貫けたからであろう。「殺すなかれ」の教えもさることながら、愛国心のなせる
業なのであろう。
(竪壕)
イップ・マン 継承
2015年 中国・香港合作 1時間45分 <予告編>
監督:ウィルソン・イップ
出演:ドニー・イェン/リン・ホン/マックス・チャン/マイク・タイソン
ハリウッドでも活躍するドニー・イェンがブルース・リーの師と知られるイップ・マン(葉問)を演じる、『イッ
プ・マン 序章』(08)『イップ・マン 葉問』(10)続くシリーズ第3作。
*
横川シネマで『イップ・マン 継承』を見ました。主演は、ドニー・イェンで、私は熱烈ではないけど、彼の
ファンなのです。去年は、スター・ウォーズの脇筋の映画『ローグワン』で、勝新の『座頭市』ばりの殺陣
(アクション)を見せていました。今回の「イップマンシリーズ3」は、香港の実在した武術家の自伝的映画
の3作目。カンフー映画への関心の切っ掛けは、もちろん、40年以上も前に見たブルース・リーの『燃え
よドラゴン』(73)です。その後、B・りーの映画は、田舎や京都等の映画館で全部見ました。彼が残した
フイルムを編集して作成した『ブルース・リー死亡遊戯』(78)は、『燃えよドラゴン』との2本立てで、今は
なくなった的場シネマで見ました。
当時は東映も千葉真一を主人公にカンフー映画を作り、そこそこの出来でした。惜しかったのは、千葉
の愛弟子で『女必殺拳』(74)などでアクションの切れが凄かった、志穂美悦子が、長渕剛と結婚して引
退したことでした。
B・りーの後は、ジャッキー・チェンやサモ・ハン・キンポー、さらにはジェット・リー等の映画がありました。
そんなカンフー映画ブームも吹き飛んだ後、ひょいと出てきたのがドニー・イェンで、ついふらっと見に
行ったのが「イップマンシリーズ2」(サロンシネマ)でした。その映画の最後の場面は、彼が少年と出会
いますが、彼の名は「小龍」、後のブルース・リーです。
自分には到底出来ない、信じられない凄技のカンフーアクションを見るのと(人が死ぬことはありませ
ん、ご安心を)、CGとは全く違う迫力に圧倒されます。
私のたくさんある気分転換の映画ジャンルの一つです。彼の映画『孫文の義士団』(09)も三国志の関羽
を演じた映画も、アクションの迫力は凄い! (ストーン)