2013/6月掲載
「グライド・イン・ブルー」「CUT」「プレステージ」
グライド・イン・
ブルー
1973年製作 アメリカ映画 上映時間1h53
字幕なし
STAFF
監督・・・ジェームズ・ウィリアム・ガルシオ
脚本・・・ロバート・ボリス
撮影・・・コンラッド・L・ホール
音楽・・・ジェームズ・ウィリアム・ガルシオ
CAST
ジョン・ウィンターグリーン・・ロバート・ブレーク
ジッパー・デイビス・・・・・・ビリー・グリーン・ブッシュ
ハーブ刑事・・・・・・・・・・ミッチェル・ライアン
ウィリー・・・・・・・・・・・エライシャ・クック
ジョリーン・・・・・・・・・・ジャニーヌ・ライリー
この映画はモニュメント・バレーを舞台に夢破れた男たちの孤独、挫折、哀愁を通して病める大国アメリカを乾い
た筆致で描きだしています。ラストの超ロングショットに注目。
ジョン・ウィンターグリーンは、アリゾナの砂漠地帯を取り締まる白バイ警官です。いつものように荒涼たる砂漠
に伸びるハイウェイを巡回し始めたとき、同じ隊の唯一の友人ジッパー・デイビスに出会います。彼は道路の脇で
昼寝の最中です。一介の白バイ警官ではあきたらず、殺人課の腕きき刑事になりたいという夢を持つジョンに対
し、デイビスには将来に対する希望はありません。あるのは最高級のオートバイ、エレクトラ・グライド・スペシ
ャルを手に入れたいということだけです。そのとき、道路わきの草むらから老人が逃げ出します。捕まえてみる
と、老人はウイリーと名のり、友人が小屋で自殺していると喚き始めます。ジョンは他殺だと主張しますが、平凡
な自殺事件として片づけられてしまいます。不満を持ったジョンは、しつこく死体の解剖を要求します。そのジョ
ンの要求を腕ききと目されている初老のハーブ刑事が聞き入れます。結果は他殺でした。ハーブ刑事はジョンの腕
を見込んで、彼を自分の補佐としてそばにつけます。ジョンは刑事に1歩近づけたと喜びます。聞き込みで殺され
た老人は最近ヒッピー仲間と親しくなってから金廻りがよくなったことが分かってきます。ハーブ刑事のヒッピー
に対する手荒で病的な尋問はジョンを驚かせます。その夜、2人はバーに立ち寄りますが、酒場の女ジョリーンの
話からハーブが不能者であることをジョンは知ります。ハーブ刑事は自分の弱みを握られたことに対し、病的な苛
立ちを見せ、ジョンを元の白バイ警官の職務に戻してしまいます。ある夜、ジョンはロックコンサートの警備に当
たっていました。誰もいなくなった会場で老人が1人で掃除をしています。ほうきを持つ手は重そうで、その姿は
孤独感に満ちています。ジョンは事件の真相を掴んだような気がしました。彼は1人暮らしのわびしい小屋にウイ
リーを尋ねます。ウイリーは只1人の友人がヒッピーたちに取られると思い殺してしまったと告白します。しかし
被害者の持っていた金の行方は不明なままです。次の日、ジョンはデイビスの家を尋ねます。彼は自慢気にエレク
トラ・グライド・スペシャルを見せるのでした。だが、これをデイビスに買えるはずはありません。ジョンは彼に
忠告をしますが、聞き入れず逆に拳銃を向けられ発砲されます。思わず応戦したジョンは、デイビスを撃ち殺して
しまいます。彼には、ウイリーと同様、もう友達はいません。数日後、いつものようにジョンがパトロール中、不
審な車が通過します。彼はすぐに追跡して車を止めますが、運転していた男は、以前ジョンとデイビスが退屈をま
ぎらわすためにいやがらせをした男でした。ジョンは取調べもせず行かせますが、彼が免許証を残していたのに気
づき、車のあとを追います・・・。
ロックバンド"シカゴ”のプロデューサー ジェームズ・ウィリアム・ガルシオの初監督作品で「イージー・ライダ
ー」「バニシング・ポイント」と同様にベトナム戦争の後遺症を色濃く残したアメリカン・ニューシネマの伝説と
呼ばれています。原題は『エレクトラ・グライド・イン・ブルー』ですが、そのエレクトラ・グライドとはハーレ
ーダビッドソンの最新型(当時)の車名です。
CUTカット
2011年製作 日本映画 上映時間2h <予告篇>
STAFF
監督・・・アミール・ナデリ
脚本・・・アミール・ナデリ
青山真治
撮影・・・橋本桂二
CAST
秀二・・・西島秀俊
陽子・・・常盤貴子
正木・・・菅田俊
高垣・・・でんでん
ヒロシ・・笹野高史
映画監督の秀二(西島秀俊)は、いつも兄から金を借りて映画を撮っていましたが、どの作品も商業映画として映画
館でかけることさえできずにいました。しかし、片方ではバスター・キートンや新藤兼人などの名作を古びたビル
の屋上で上映し続けてもいます。そんなある日、秀二は兄が借金トラブルで死んだという知らせを受けます。
兄はヤクザの世界で働いていて、そこから秀二のために借金をしていたのでした。
秀二は何も知らずにいた自分を責めますが、兄のボスである正木(菅田俊)から、残った借金額を聞かされ返済を
求められます。その額1,254万円。
しかし、秀二には金を返す当てはありません。彼は、殴られ屋をすることで返済することを決め、ヤクザの
息のかかったBARで働く陽子(常盤貴子)と組員のヒロシ(笹野高史)を巻き込みながら、兄が死んだ場所で
殴られ屋を始めるのです。殴られるたびに自分の愛する映画監督たちが撮った作品を思い浮かべる秀二。
狂気じみたこんな仕事がなぜ成立するのか不思議な気がしますが、秀二の思いに圧倒され納得させられてしまいま
す。だが、借金返済はそれほど簡単なものではありませんでした。ラストでただ殴られ続ける秀二に被さって
出てくる100のテロップ。そこには映画を粗末に扱う業界への凄まじい怒りが込められています。
そして秀二が最後に取った行動に監督の強い意志としたたかさをみました。
西島秀俊が文字通り体当たりで演じています。パンチのひとつひとつが映画への熱い思いなのだと思えるか、思え
ないかで評価は大きく分かれるでしょう。
プレステージ
2007年日本公開 アメリカ・イギリス合作
上映時間2h08
STAFF
監督・・・クリストファー・ノーラン
脚本・・・クリストファー・ノーラン
ジョナサン・ノーラン
撮影・・・ウォーリー・フィスター
音楽・・・デヴィッド・ジュリアン
CAST
ロバート・アンジャー・・・ヒュー・ジャックマン
アルフレッド・ボーデン・・クリスチャン・ベール
ハリー・カッター・・・・・マイケル・ケイン
オリヴィア・・・・・・・・スカーレット・ヨハンソン
時は19世紀末のロンドン。二人の天才マジシャン、華麗なパフォーマンスを得意とする“グレート・ダントン”
ことロバート・アンジャー(ヒュー・ジャックマン)と、卓越した想像力を持つ“THE プロフェッサー”こと
アルフレッド・ボーデン(クリスチャン・ベール)は、お互いを尊敬しつつも強烈なライバル意識を持って
います。彼らは情熱のすべてを注いで、イリュージョンの腕を競い合っていました。しかしある日、
アンジャーの愛妻であり助手のジュリア(パイパー・ペラーボ)が、脱出マジックの失敗で死亡してしまい
ます。トリック中にほどけるはずだった縄を結んだのはボーデンだったのです。アンジャーの苦悩が始まり、
彼は妻を死に導いたボーデンに復讐を誓います。まもなくボーデンはサラ(レベッカ・ホール)と出会い結婚。
アンジャーのもとには助手志願の美しい娘オリヴィア(スカーレット・ヨハンソン)が現れますが、彼の怒りが
癒されることはありませんでした。次第に危険なトリックにのめり込んでいくアンジャーとボーデン。
そして罠にはまり殺人者として獄に繋がれるボーデン。アンジャーの復讐はなったと思われましたが・・・。
物語は二転、三転して目が離せません。監督/脚本は「ダークナイト」のクリストファー・ノーランです。