2013/8月掲載

「パシフィック・リム」「スタンリーのお弁当箱」「バーニー/みんなが愛した殺人者」「風立ちぬ」

「ペーパーボーイ 真夏の引力」「終戦のエンペラー」「偽りなき者」


(C) 2013 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND LEGENDARY PICTURES FUNDING,LCC
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パシフィックリム

 

2013年公開 アメリカ映画 上映時間212 <予告篇>

 

STAFF

 監督・・・ギレルモ・デル・トロ

 脚本・・・トラヴィス・ビーチャム

      ギレルモ・デル・トロ

 撮影・・・ギレルモ・ナヴァロ

                       音楽・・・ラミン・ジャヴァディ

             CAST

              ローリー・ベケット・・・・・チャーリー・ハナム

              森マコ・・・・・・・・・・・菊池凛子(幼少期・芦田愛菜)

              スタッカー・ベントコスト・・イドリス・エルバ

              ニュートン・ガイズラー・・・チャーリー・デイ

              ハーマン・ゴッドリーブ・・・バーン・ゴーマン

 

突っ込みどころ満載の超娯楽映画ですが少し見方を変えれば日本への痛烈な皮肉が込められているとの見方も

 

可能で、そう捉えればなかなかの作品です。

 

その昔、宇宙からの侵略者が地球を征服に来たのですが環境があまりにも良くて息苦しくなり太平洋の深海に

 

ある裂け目に侵略用の怪獣を隠し、時期を待っていました。それがこのところの環境汚染で時期到来。怪獣が裂

 

け目から現われ地球上の各都市を破壊し始めます。人類はそれに対抗するために強力なロボットを作って対抗し

 

す。怪獣は一体ではなく次々に現れます。従ってロボットも各国がそれぞれ国の威信をかけて作ります。

 

ロシアのロボットは動力として旧式の原子力を使用。名前を「チェルノ・アルファ」といいます。なにかの悪い

 

冗談としか思えません。次第に劣勢になった地球防衛軍はロボットを諦めて巨大な「壁」を沿岸に作ることにし

 

ます。科学の粋を集めたロボットよりも壁を選択せざるを得なくなるところは日本の原発政策を想起させ苦笑し

 

てしまいます。

 

大方の予想通り怪獣はそんな壁も木っ端みじんに打ち砕き地球は危機に陥りますが・・・。

 

ものすごい重低音が腹に響き余分な脂肪を取り去ってくれます。終映後、空腹感を覚えます。

 

ど迫力な映像作りに成功しているものの、そのCGに予算を食われたせいか登場人物の層の薄さが際立ちます。

 

司令官がいて中間管理職がおらず直ぐに現場スタッフに指令が行きます。風通しがたいへんいいです。

 

地球の危機だというのに軽い調子の科学者が二人しかいませんし、指令室にも数人しかいません。心配になりま

 

す。司令官ベントコストは過去にロボットを操縦中、防護服の不備で放射能を浴び末期がんに侵されています。

 

東電への皮肉としか思えません。流れ上、ラストはロボット操縦のコンビを組んでいるチャーリー・ハナムと

 

菊池凛子のキスシーンがあるのが普通だと思いますがありません。どちらかが嫌がったのでしょうか。

 

赤い口紅の芦田愛菜が泣き叫びます。いつの間に世界共通語になったのか「怪獣」は「カイジュウ」と発音され

 

ます。冒頭で何だか東宝の昔懐かしい怪獣映画のようだなあと思った答えがエンドタイトルにありました。

 

ラストである日本人の名前がクレジットされ少し嬉しくなります。

                                2013/8/19 バルト11<紅孔雀>


(C) 2012 FOX STAR STUDIOS INDIA PRIVATE LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
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タンリー

    お弁当

2011年製作 インド映画  上映時間136 予告篇>

 

STAFF

 監督・・・アモール・グプテ

 脚本・・・アモール・グプテ

 撮影・・・アモル・ゴーレ

 音楽・・・ヒテーシュ・ソニック

              

                    CAST

                     スタンリー・・・・・パルソー

                     アマン・メヘラ・・・ヌマーン

                     ヴァルマー・・・・・アモール・グプテ

                     ロージー・・・・・・デイビヤ・ダッタ

 

ある日スタンリーが顔にあざを作って学校にやってきます。みんなが「どうしたの?」と聞くとスタンリーは

 

「悪い奴とけんかをしてやっつけてやった」と面白おかしくクラスメイトに語って聞かせます。スタンリーは

 

頭のいい子ですが「謎」を抱えています。しかし、いつも明るく振る舞います。スタンリーはクラスの人気者

 

ですが、何故かお弁当を持ってきません。昼食時は水を飲んで我慢しています。友だちが「一緒に食べよう」

 

といって分けてくれようとしますがそれを見た国語教師ヴァルマーが怒ります。実際ヴァルマーは嫌なやつで

 

同僚の教師から弁当を分けてもらったり、生徒の弁当をくすねたりしているのです。しかも、スタンリーには

 

「弁当がないのなら学校にくるな!」と言い放ちます。ラストでスタンリーの人生の「謎」が判ります。

 

困難な時でも明るくけなげに生きるスタンリーに共感します。彼はきっとそのバイタリティで力強く生き抜き

 

将来は幸せを掴むに違いないと予感させてくれます。

 

憎らしい教師ヴァルマーを演じているのはアモール・グプテ監督自身です。そしてスタンリー役を務めたのは

 

監督の一人息子パルソー君です。

                               2013/8/20 サロンシネマ <紅孔雀>


 (C) 2011 Bernie Film, LLC and Wind Dancer Bernie, LLC. All Rights Reserved.
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バーニー/

 

みんながした殺人者

               <予告編>

 

宣伝コピーに「『スクール・オブ・ロック』のコンビが贈る、テキサス

 

で起こったうそみたいな本当の話」った。バーニーを演じるのが

 

ジャック・ブラックなので、コメディーと思いきや意外にも、結構深い

 

ミステリーだった。ドキュメンタリーとドラマが同居している、何やらシェアハウスのような作りでもあった。

 

そうそう、州立大学で葬儀学を学んだ、バーニーの遺体処理は繊細で美しく、テキサスの『おくりびと』のよう

 

でもあった。あまり期待せずに観に行ったら、結構、拾い物の佳作と思うのだが…。    (たまご焼き)


 (C) 2013 二馬力・GNDHDDTK
(C) 2013 二馬力・GNDHDDTK



ちぬ <予告編>

 

うーん。困ったな。これを宮崎駿の「遺言」といわれても。

 

零戦の設計主任、堀越二郎の人生を描いた作品だ。      

 

もちろん、それでは、アニメ版「プロジェクトⅩ」にしか

 

ならないから、堀辰雄の『風立ちぬ』を流用して

 

いる。で、つくづくアニメという手法はエピソードを描くにはいいが、人間ドラマを描くには向かないんだと

 

わかる。特に宮崎のキャラには陰影がないし。冒頭の夢の空戦シーンの出来がいいだけに。確かに、感動はする

 

が嫁が死シーンがクライマックスっていいのか。ぼくには、煙草飲みにはいい時代だったんだとしか伝わって

 

こなかった。 (ウーロン茶)


(C)2012PAPERBOYPRODUCTIONS,INC
(C)2012PAPERBOYPRODUCTIONS,INC



ペーパボーイ 真夏引力

                     <予告編>

 

死刑囚と婚約したシャーロットは、彼の冤罪を証明して欲しい

 

と、新聞記者のウォードに依頼する。大学を中退し、無為に

 

過ごしていたウォードの弟ジャックは挑発的なシャーロットの

 

魅力に惹かれていく。警官殺しの真相を探るなか、次々と起こる

 

刺激的な出来事、そして衝撃のラストとなるのだが、謎解きを期待していた私は、かなりがっかりした。

 

見方を変えれば、もっと深いものが見えたのかもしれないが、もう一度見るには、目を覆いたくなるシーンが

 

多すぎる。 (みかん)


(C)FellersFilmLLC2012ALLRIGHTSRESERVED
(C)FellersFilmLLC2012ALLRIGHTSRESERVED

 

終戦エンペラー  <予告篇>

 

日本人の感覚では、作ることが出来ない映画だと思った。

 

『東京裁判』など日本の戦後処理について描いた映画はあるが、

 

戦争遂行の最高責任者を正面から描いた作品としては案外、

 

初めてではないか。歴史の1ページに関わった人々に思いを馳せる

 

きっかけになる映画だ。ただ、マッカーサーを演じたトミー・リー・

 

ジョーンズは、缶コーヒーのCMの印象があまりに強すぎて、なかなか人物に入り込めなかったのが残念!

                                           (麦酒)


(C) 2012 Zentropa Entertainments19 ApS and Zentropa International Sweden
(C) 2012 Zentropa Entertainments19 ApS and Zentropa International Sweden


偽りなき R15+)

 

2012年 デンマーク映画 上映時間155 <予告篇>

 

STAFF

 監督・・・トマス・ビンターベア

 脚本・・・トマス・ビンターベア

      トビアス・リンフォルム

 撮影・・・シャルロッテ・ブルース・クリステンセン

 音楽・・・ニゴライ・イーイロン

 

 

 

                CAST

                 ルーカス・・・マッツ・ミケルセン

                 テオ・・・・・トマス・ボー・ラーセン

                 クララ・・・・アニカ・ヴィタコブ

                 マルクス・・・ラセ・フォーゲルストラム

                 グレテ・・・・スーセ・ウォルド

                 ブルーン・・・ラース・ランゼ

 

あのデンマークでもこんなことがあるのかと思ってしまいます。舞台になるのはどこにでもあるような

 

小さな町です。発端は些細なことでした。

 

クララという名前の幼稚園児がいます。両親はよく喧嘩をします。そんなときは部屋を出て行かされます

 

がクララには邪険にされる理由がわかりません。一方、小学校の教師だったルーカスは閉校により失業。

 

その後、やっとクララのいる幼稚園に職を得たのです。妻とは離婚しており一人暮らしですが息子の

 

マルクスには慕われています。

 

クララはルーカスが大好きです。ルーカスも幼いころからの親友テオの娘クララを可愛がっていました。

 

クララは自宅に遊びに来て相手をしてくれるルーカスと幼稚園で大勢の中の一人として自分を扱う

 

ルーカスの違いに戸惑い、疎外されたような気持になります。ある日、クララが兄から見せられたポルノ

 

画像の事を口にすると園長のグレテはルーカスが幼児虐待をしたのだと勝手に思いこみ、ルーカスの話も

 

まともに聞かず、カウンセラーらしき人物の言動を鵜呑みにして全保護者に報告、警察にも届けます。

 

一夜にして「事件」を全住民が知ることになりルーカスは職を失います。町中から迫害を受け買い物に行

 

っても売ってくれません。

 

「子供は嘘をつかない」と信じきった大人たちばかりですが、マルクスとわずかな友人たちが味方になっ

 

てくれます。クララは母親に「ルーカスは何もしていない」と言いますが事は大きくなりすぎていまし

 

た。母親は聞き流します。ルーカスは色々な嫌がらせを受けますが無実を訴え続けます。町中の暴走ヒス

 

テリーが頂点に達したころ今度はテオがクララから「ルーカスは何もしていない」と聞かされます。

 

テオ自身もあることから「事件」を疑い始めていました…。ラストに表面上は元に戻ったように見える住

 

民とルーカスとの関係が、ただ瘡蓋の下に押し込められただけだった事が判る衝撃のシーンが待っていま

 

す。

 

いやでも「それでもボクはやっていない」を思い出します。何はさておいても男は満員電車では両手で吊

 

革を持たなければいけません。

 

物語の発端は小さなことです。クララの兄がしたこともありがちなことでした。

 

しかし誘導尋問のようにしてクララから「話」を聞き出した病的潔癖症ともいえるグレテ園長の浅慮が

 

ルーカスの人生を根底から覆す「事件」にしてしまったのです。事を大きくするだけ大きくして手に負え

 

くなると後は逃げまくる園長には私の様にいくら穏やかな人間でも腹が立ちます。

 

映画は住人たちの中にある民度もあぶりだしていきます。

 

最初から曇り空の画面を覆う不穏な空気に引き込まれ、気を失っている暇はありません。

 

嫌がらせを受け、殴られたりしても町にとどまり、めげることなく生きて行こうとするルーカスを演じた

 

マッツ・ミケルセン(カンヌ国際映画祭主演男優賞)とクララ役のアニカ・ヴィタコブには脱帽です。

 

                              2013/8/3 サロンシネマ <紅孔雀>