2013/1月掲載
「決断の3時10分」「ブラッド・ワーク」「真昼の決闘」
決断の3時10分
1957年日本公開 アメリカ映画 上映時間1h32
<予告篇>日本語字幕なし
STAFF
監督・・・デルマー・デイビス
脚本・・・ハルステッド・ウェルズ
撮影・・・チャールズ・ロートン・Jr
音楽・・・ジョージ・ダニング
主題歌・・フランキー・レイン(3:10 to Yuma)
CAST
ベン・ウェイド・・・・・・グレン・フォード
ダン・エヴァンス・・ ・・ ヴァン・ヘフリン
エミー・・・・・・・・・・フェリシア・ファー
アリス・エバンス・・・・・レオラ・ダナ
アレックス・ポッター・・・ヘンリー・ジョーンズ
広々としたアリゾナ荒原―そこを行く駅馬車がたびたび襲われています。襲ったのはウェイド(グレン・フォード)
一味です。彼らは家畜の群を使って駅馬車を止めてから襲います。なかなかの知能犯です。ある日、たまたま
この光景を目撃したのは貧乏牧場主のダン(ヴィン・ヘフリン)と子供たちでした。しかも自分の牛が使われて
いたのです。しかし多勢に無勢、手出しはできません。息子たちはそれが不満です。しかし、ダンの一家には
もっと切実な問題が控えていました。干ばつのため大事な牛が死に瀕しているのです。取水の権利を買わなければ
なりません。妻にせっつかれダンが金を借りるために町にやってきてウェイドと出会います。
ウェイドは酒場の女・エミー(フェリシア・ファー)にうつつを抜かし、そのすきに難なく逮捕されて
しまいます。まぬけぶりにも程があります。牢獄のあるユマまでウェイドを護送するには、彼の子分たちの襲撃を
覚悟しなければなりません。ダンは謝礼金が欲しくて護送の役目を買って出ます。途中、ダンの家に立ち寄り
食事を取ります。ワルですがカッコいいウェイドに妻や子供たちがシンパシーを感じてしまいます。
ダンはイラッとします。あたりが柔らかく口のうまい「人たらし」のボスです。ウェイドを停車場のある町まで
連行しホテルの1室に監禁します。停車場からユマ行の汽車が出るのは3時10分、発車までまだ時間があります。
その間にウェイドの子分たちがやってきます。ダンは必死で撃ち合います。味方はみんな逃げて孤立無援です。
その上、余計なことにダンの妻がやってきて、危険だから手を引いてくれと哀願するのです。
「何だ今更。もう遅い」と腹が立ちます。雇い主も「金は払うから逃げろ」といいます。
しかし、本当にもう遅いのです。ダンにも男の矜持があります。ここまできたら銭かねではありません。
子供たちにカッコいいところを見せなければ父親の威厳を示すことができません。意地もあります。
そして列車がやってきます。ダンとウェイド、走りながら撃ちながら停車場を目指します。そこでウェイドも
またきっちり男の矜持をみせるのです。お互いの立場を越えたラストはさわやかです。そして待ちに待った大粒の
雨が降り出します。悪人であるベンが魅力的に描かれていて憎めません。
2007年にリメイク版「3時10分、決断のとき」が公開されました。
ブラッド・ワーク
2002年日本公開 アメリカ映画 上映時間1h50
<映像(一部)>日本語字幕なし
STAFF
監督・・・クリント・イーストウッド
脚本・・・ブライアン・ヘルゲランド
撮影・・・トム・スターン
音楽・・・レニー・ニーハウス
CAST
テリー・マッケーレブ・・・クリント・イーストウッド
バディ・ヌーン・・・・・・ジェフ・ダニエルズ
ボニー・フォックス・・・・アンジェリカ・ヒューストン
グラシエラ・リバース・・・ワンダー・デ・ジーザス
ジェイ・ウィンストン・・・ティナ・リフォード
クリント・イーストウッドが製作・監督・主演の3役を務めたサスペンス・ドラマです。
さすがに往年の体力はなく痛々しいほどですが、それを逆手にとっていて新しい切り口で見せてくれます。
有名なFBI心理分析官テリー・マッケーレブ(クリント・イーストウッド)は2年前、連続殺人犯
“コード・キラー”を追跡中、突然心臓発作で倒れ犯人を捕り逃がしてしまいます。心臓が悪いのですから体力が
なくったって仕方がありません。少々強引ですがその力技に納得させられてしまいます。心臓を移植して何とか
一命を取り留めたテリーは早期退職し、現在はクルーザーでの隠居生活を送っているのですが、いつまでも「ダー
ティ・ハリー」ではありません。通院と薬が 欠かせない体になっています。そんなある日、グラシエラと名乗る
見知らぬ女性が現れます。そして、自分の妹を殺害した犯人を探してほしいと依頼するのです。
心臓移植したことを理由に断るテリーにグラシエラは、その心臓が殺された妹のものであることを伝えます。
テリーも殺された女性も数少ない血液型の持ち主だったこととテリーが有名人だったためにマスコミに取り上げ
られグラシエラが移植の事実を知り得たのでした。移植後間もないため医師からは強く止められますが命を
もらったという現実ががテリーを再び捜査の現場へと引き戻すことになります。テリーが病み上がりの体を
抱えながら調査を開始すると再び“コード・キラー”の影がちらつき始めます。
脚本は「L.A.コンフィデンシャル」を担当したブライアン・ヘルゲランドです。
真昼の決闘
1952年日本公開 アメリカ映画 上映時間1h25<スライド画像>
STAFF
監督・・・フレッド・ジンネマン
脚本・・・カール・フォアマン
撮影・・・フロイド・クロスビー
音楽・・・ディミトリ・ティオムキン
CAST
ウィル・ケイン・・・・ゲイリー・クーパー
エミー・・・・・・・・グレイス・ケリー
ヘレン・ラミレス・・・ケティ・フラド
コルビー・・・・・・・リー・ヴァン・クリーフ
西部劇というよりも西部を舞台にしたシリアスな人間ドラマです。1870年、ハドリービルという西部の小さな町が
舞台になっています。結婚式を挙げ、町を去る保安官ウィル(ゲイリー・クーパー)に皆がお祝いと感謝の言葉を
述べて送りだします。ちょうどその時、かつてウィルが逮捕した無法者フランクが釈放され帰って来るという知ら
せが入ります。駅では3人の仲間がフランクの到着を待っています。迷った末に、町へ戻り彼らとの対決を
決意するウィルでしたが、否定的な新妻エミー(グレイス・ケリー)は一人町を去ろうと駅へ向かいます。
ウィルは協力者を求めて、炎天下の町を歩き回ります。臆病で利己的な住民たちはあれこれと理由を付けて
誰ひとり協力しません。フランク一味が町へ帰って来ると昔のように女性が気軽に外出できない日々に戻って
しまいます。やがて正午となり、駅に列車が到着、エミーが乗り込むと同時に、ウィルへの復讐を誓うフランクが
降り立ちます。登場人物それぞれの思惑が入り乱れる中、全く普通の男であるウィルは孤立無縁のまま戦うことを
覚悟しますが・・・。
教会へ対する皮肉や劇中時間と実際の上映時間をシンクロさせた事も、作品を貫くリアリズムを更に際立たせて
います。グレイス・ケリーの匂い立つ美しさやディミトリ・ティオムキンの音楽 (ハイ・ヌーン)が作品を豊かな
ものにしています。またラストシーンにジョン・ウエインが噛みついたという有名な話があります。
フランクの3人の仲間の一人がリー・ヴァン・クリーフだということに初めて気がつきました。
彼は1960年代マカロニウエスタンが最盛期だった時に「夕陽のガンマン」などクリント・イーストウッドとともに
大活躍し、敵役として欠かせない存在でした。脚本のカール・フォアマンはハリウッド・テンの一人です。
監督のフレッド・ジンネマンはこの作品の25年後、名作「ジュリア」を演出することになります。